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イブの夜


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美希は夜の公園で、戸惑う息子の顔に
そっと唇を寄せていった。
息子に投げ込まれた光る物のせいか
人が変わってしまっていた。
イブの夜、ホテルの一室。
実の息子の眼前。
「今夜から、君の女になる。」
そう宣言すると彼女は全裸になった
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美希が実の息子に身体を求められて
一ヶ月ほど過ぎた。

「なにを考えているの。」
彼が心配しそう声をかけてきたが
邪険に息子の手を払いのける。

「もう元の親子関係には戻れない。」
そう気付かされた一ヶ月だった。
そのことがあってから、
母を避け出したともとれる
よそよそしい彼の態度だった。
子が親元を離れていく寂しさとは少し違う
感覚だった。

暮れも押し迫ったころ。
母親は同窓会に出るために、
駅前にあるホテルに向かっていた。
エレベーターに乗ると扉の鏡に
流行遅れのスーツ、
冴えないメイクで
生活感一杯の
醜い中年女性が映っている。
おもわず
「このまま家に帰ろうか。」
とさえ思った。
エレベーターを降りたとき、
降りてすぐのレストランでそのガラス越しに、
若い女の子と一緒にいる息子の姿があった。
「え?」
なぜか動揺している母だった。

そんなに飲んだわけではない。
周りに比較してあまりにも
みすぼらしい自分の姿、
デート中の息子の溌剌とした若さ
そのミスマッチが
気分を悪くしていた、
「なぜ?」
「どうして?」

心の中は悔恨で一杯だ。

女として、主婦としての引目
自分だけ取り残されているような、悲しみ。
そんなものがゴチャ混ぜになって
同窓会での彼女は、悪酔いしてしまった。

そんな彼女がふと自分の心という湖の底に
キラりと光っている物があることに
気が付いた。

「なんだろう?」

自問自答してみる。
答えは
息子に身体を求められたこと。
だった。
それに気がついたときには、
悪酔いが酷くなり
嘔吐する為慌ててトイレを探す羽目になる。

食べたものを全部吐いた後のことは
あまり覚えていない。
家の灯りが見えた。
そのまま家に入る気にはならず、
近くの公園のベンチに腰をおろした




夜空

寒いけれどもど星のきれいな夜だった。
そのとき心の底に光る輝きを再び感じた。
さっきよりその輝きが少し大きくなったようだ。
眼を閉じ、もっとその光を感じたいと思うと
身体が暖まってきた。

「そんなトコでなにしているの。」
公園の道路側から息子の声が聞こえた。

「君がくれた、お星様を観ていたの」
そう返事をした

「少しここで一緒に居てくれる?」

怪訝な表情を浮かべながらも横に腰をおろす。
彼は、(一ヶ月前の暴挙を叱られる。)
と思ったようだ。

「今日の同窓会の途中見かけたよ。」

「あの綺麗な女の子は彼女?」

なぜか美希の方が雄弁だった。
彼は適当な相槌しか打てずにいる。

「どう思っているわけ?」

思わず自分が吐いた言葉にドキッとする。
次の場面でなぜか泣いていた。

「どうして泣くんだよ。」

美希が泣き出したのは、、
心の底に沈んでいる物が
夜空の星のように輝き出したから。

気持ちが明るくなった。
同窓会での嫌なこと、
ここ1ヶ月モヤモヤした気分なども
すっかり晴れた気になった。
切なすぎてなかなか泣き止まない母親の肩に、
息子がそっと腕を回した。

「君は本気なんですか?」

母は息子の肩に軽く頭を傾げて
そんなことを呟いている。
息子の返事を聞きたいとは
思っていない。
息子の傍でとりとめなく泣いたり
喋っているだけだ。

その時。

心の中の小さな星が輝きを増した。
身体の内側からなにかが蘇ってくる

「女として抱いてくれるの?」

夜の公園で、戸惑う息子の顔にそっと
唇を寄せていく母親だった。
息子に投げ込まれた光る物のせいか
人が変わっていた。

イブの夜、ホテルの一室。

実の息子の眼前。

「今夜から、君の女になる。」
白山神社側からの高塔山の桜。
身体の芯で発光を始めた光が全身に満ちた。
その光は、ビッグバンを起し
身体と心を粉々に砕いてしまう光。
それを二人が知る由もなかった。
そして。
彼が母親を女として抱いたとき

「ママを滅茶苦茶にして。」
思わずそう叫んでいる母親が
息子の性器を受け入れたとき
それは起こる。

イブの夜。
あちらこちらに輝く光の中に
ひときわ明るい光源を見つけたら
美希とその息子の光かもしれない。

SRC:美母#150>イブの夜 美希とその息子

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