2ntブログ

雲間の明かり

現代版「竹取物語」

2007012.jpg

最初に変な気を起こし、
実の母親の身体に乗っていったのは息子の方だが、
二度目からは母親の方が積極的だった。
はっきり言って母の敏子は飢えていた。
ばついちだが薬剤師の資格をもってるから、
親子の生活は安定してるが、
敏子はいわゆる男運がわるいらしくて、
長いことあいてがいなかった。
こんなだから高校生になったばかりの息子に襲われて、
積もりに積もった淫情の欲求不満が激しく
発露してしまう

敏子はその次の夜、
てっきり息子の方から寝室へ来てくれるとばかり
思っていて、12時までじっと待っていたが、
彼が来そうにないので、痺れを切らして
自分から息子の部屋に押し掛けた。
母の顔を見た息子の潤も、
てっきり母に怒られると思っておどおどした様子だった。
どうもそうではないらしいとわかり、
俄然元気になった。抱き合って寝床に横になると
「電気を消してよ」
という母の甘い声に胸が高鳴り、それから一時
夢のような恍惚感に浸った。
その次の日は、寝る前に一緒に風呂に入った。
身体を洗いあって、敏子は立ったままの潤の前に跪き、
膨らみきったぼっきを握って、口に含んでやる。
愛しそうに舌で舐め回し、指でしごくと、
あっけなく放出が起きた。
少し抵抗があったが、全部呑み込んであげた。
実の息子のだからできたのだろう、
男性のを呑むのははじめてだった。

寝床に入ってから、息子が射精まじかに
「母さん、出していいの」
と、このまま生でしてもいいのかと聞いてくる。
風呂場で飲み込んであげたことで、
潤は敏子が妊娠を恐れているんだと解釈したようだ。
「いいわ、きて」
敏子は中断される方がいやだった。
こうしてそれこそあっという間に親子で
爛れた性活に浸りきってしまうが、
なにせ、若い息子よりも実の母の方がすきだから、
潤の方が怖気づいてしまう。
嫌いではないが、敏子はいつまで経っても底無しだ。
親子の生活はそのことだけに染まっていく感じで、
潤のプライバシーもなくなる。

敏子が息子の変調にもっとはやく気付くべきだった。
気付いてはいたのだ。
なにか行為に熱が入らなくなった感じの息子に、
敏子は自分のてくにっくのせいだと思って、
さらに磨きを掛けて努力してしまった。
それがますます潤を追い詰めていたことを知らなかった。
そしてある日、潤が学校から帰ってこない。
翌朝まで待って、敏子は警察に届けた。
その三日後に潤は奈良に居るところを発見され、
家に帰ってきた
潤の思考力はその思考の領域を遥かに超えて
気薄になっていた。
思考の堂々巡りを延々と繰返し、
言ってみればメビウスの環をバイクで飛ばしている
感じになる。
理屈だけならなんとかなるが、それに性欲が絡み、
親子の血が鎖となる。
そして潤は無意識にまほろばを目差して歩いていた。
なにかを捨てようとしたわけでも、
逃げようとしたわけでもなかった。
いま自分に必要なのは心を空白にして
ただゆっくりと歩くことだろう。
漠然と感じ、そうしただけだった
ナースの母
その一年後。

敏子はおなじ過ちを繰り返してしまう。
潤が彼の方から敏子の寝床に寄って来たとき、
息子の心は完全に治って元に戻ったと思った。
元に戻らせてはいけないとは思えない。
それが宿命というのだろうか。
親子はその濁りのない心のままに愛し合ってしまう。
穏やかだが激しい性交が止むと、
雲間から月が顔を出した。
そして潤は敏子の寝室から出ていって消えた。
敏子の前から姿を消したが、
さすがの敏子も、三度目の過ちを繰り返すことは
しなかった。
気持ちは罪悪感に切り裂かれ、
身体は恐ろしい寂寞感に突かれたが、
絶える決心をし、潤を追い駆けることを止めた

潤が敏子の前から姿を消したときの月光は、
ある意味でこの親子に罰を与えていた。
敏子は潤の子を身籠ってしまった。
可愛い女の子が産まれた。
その子が16歳の時、恋をした。
恋は愛に昇華し恋人同士は将来を誓い合った。
そしてその子は自分の出産の秘密を知ってしまった。
美しい処女は一人で永遠の眠りにつき月に還った。
なにも月光がみずから母と子に与えた娘を
呼び戻すこともないと思うが、
罰は罰として受けねばならない

最愛の息子と娘と、ふたりも失った敏子の衝撃と
絶望感は想像を絶した。
敏子の気持ちを押し潰したが、
健気にも敏子は正気を保った。
敏子が微かでも救いを感じたのは、
潤はなにも知らないでいられたということだった。
娘すなわち妹が産まれたのも死んだことも知らない。
それが僅かな救いだった。
茨の道を歩む母に癒しの月夜が訪れる。
深夜、夢を見ていた敏子を呼び覚ます娘の声が
聞こえた
「お母さん、起きて。」
はっとなって寝床から起き上がった。
たしか娘は「お父さんが来る。」
と言った。
急いで着替えた敏子は家の外に出た。
月明かりに杖をついた老人がゆっくりと歩いてくる。
潤は視力をほとんど失っていた。
ホームレスの栄養失調だが、
それにしても老けていた。
この時、敏子は53歳、潤は35歳くらいだった。
陳腐な言い方だがふたりはその後しあわせに暮らした。
現代版の「竹取物語」みたいに月から戻る娘を
待ちわびて暮らした。
そういうものを司る月があっけにとられたのは、
親子はまた愛し合っていることだ。
裸で抱き合い、性器を結合させている。
こうした果てもない繰返しが人の世だから、
月がますます冴え渡るしかない


Src Macsho氏 鵺伝説#044
関連記事