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未来から来た私の息子そして夫

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ある地方都市に住む主婦です。
私は失ったものの大きさに沈んでいます。
人に言えない関係を持ったひとり息子が大学へ入り、
この家を出て行きました。
それからというものはふさぎこむことが多くなり
普通なら息子の門出を祝うのが母親の務めですが、
ずっと心の奥で彼を想わない日はありません。
今でも2人で聴いた曲を聴くと涙があふれます。
私はもう若くはありませんし。
彼と過ごせた時間が、どれほど
大切なことだったか、息子が居なくなってはじめて判りました。
それほど彼を愛したのです。
夫と離婚すると息子に言ったのに、
彼は、
「ずっとそばにいるから離婚なんてしなくてもいいよ。」
と言ってくれました。
そんな私に息子は疲れたのかもしれません。
これからの約束は、なにもしてくれませんでした。
彼とふたりで歩いた町を、一人で歩くのはとても辛いのです。

息子と別れて半年ほど経ったある日。
夫が私に言います。

「行ってきなさい、亮の元へ・・・。」
「ニューヨークの彼に逢いに行きなさい。



息子と別れて半年ほど経ったある日。
夫が私に言います。

「行ってきなさい、亮の元へ・・・。」
「ニューヨークの彼に逢いに行きなさい。」

息子と私が男と女の関係とは夫は思っていないはずです。
ただ、あまりの私の落ち込みように、
原因が息子の巣立ちにあるということを理解してくれているようです。
夫が心配するほど私は痩せ細ってしまったのです。
夫の気遣いには感謝しますが、素直に彼の元へは行けないのです。
息子との堅い約束で、
「ぜったいに戻ってくるから。
「それまで一人にしてくれ。逢いに来るな!」
そう誓わせられていました。
気が付くと電話のベルが鳴っていました。
息子からの電話でした。
「ああ俺。今、東京」
私は立っていられない程、震えていました。
うれしくて、夫への置手紙を書くのも上の空で、新幹線に飛び乗りました。
どんなにも電車にいる時間が長く感じたことでしょう。
私の頭の中は、彼と激しく愛し合った日々が走馬灯のように駆け巡り
顔を赤らめたり、深い吐息をしたり、じっとしてられません。
何度も何度も化粧を直しました・・・。彼に嫌われたくないという一心で。
「早く、早く一刻も早く、彼の胸に飛び込みたい!」
そればかり考えています。
彼のいるホテルに着くと部屋のドアを開けました。
窓から差し込む逆光に彼の姿が。思わず駆け寄りました。
腕と腕が触れて、彼の顔を見上げた、その瞬間
「キャア!あ・な・た なぜっ!」
(夫がどうしてここに・・・・・?。なぜ?亮ではなくあなたがここに?!)
そのまま私は正気を失いました。
永遠に・・・・・

「ごめんな母さん。」
「亮は俺。お前の夫の俺なんだよ。未来からタイムトラベルしてきた。」
「そして実の母親となる女性と結婚して俺が俺自身を。」
「でも俺が亮なんだよ。」

「ニューヨークというのは嘘で元の世界の地平線に
「帰ることができないか調べていた。」
「でも、それももう・・・。」

薄暗い照明に照らされ気を失った私に向かってそう呟く亮。
いえ、私の夫がそこにいました。

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