2ntブログ

陽子 と 勉

121.jpg
『迷ったら、まず行動してみる!』
それがキャリアとして第一線で働く陽子の哲学だ。
アメリカ大手証券会社の主任研究員の肩書きを持つ陽子。
43歳の若さでここまで登りつめた。
たおやかでありながら、筋金入りの挑戦者にみえる。

タフで我慢強く、基本的にストレスは溜め込まない性分だが、
できるだけ相手の喜びを共有しようとする。
そんな好奇心が、ひとり息子に対してだけ
奇妙に歪んでしまった。
陽子が仕事でニューヨークに滞在中、
息子の勉が陽子の元へ訪ねて来た。
そして過ちを犯した。

高校生になった勉に対して対処の仕方が判らない。
気持ちがちぐはぐになる。
構ってやれなかった負い目とは違う。
血の繋がりというもの、
それを巧くコントロールできない。
両親が離婚した後、勉は父に引き取られて育った。
定期的に母親と逢ってはいたが、
産みの母親という意識は稀薄だった。
高校への進学を控えた春休みにNew_Yorkに来て
寝泊りするうち、
母に女を意識しだして抱き付いた。
そのとき陽子には韓国人の愛人がいた。
勉と関係した翌朝から、その彼のことは頭にない。
肉体的より精神的な変化が起きた。
意識していなかった心の隙間は
たった一晩関係したことで埋まり、清々しい気分になった。
その上、かなり年下の新しい恋人をGet。
それが実の我が子という意識もないのだが。

翌朝。

「今日のスケジュール、すべてキャンセルした。」
「一緒に過ごそう。」

母がにこにこしながら勉に向かって言う。

まるで、なにか記念日が来たかのよう。
彼がシャワーを使おうとすると、
「わたしも一緒にいい?」
と、はにかみながら己が身体を晒す。
彼が彼女に対してしでかしたことを、
あれこれ思い悩む暇をまったく与えず
産みの母は我が子と愛人同士な空間に浸りきる。
息子にとって陽子の一連の様相と素振りは
甘い愛人の肉体と優しい母が融合して
抱き付いてくることになにか違和感を感じていた。


「ママと呼ばないで。」
「陽子って呼んで。」
そう叫んでいる母。
もつれ合いながらベッドに入った母と息子は、
昨夜のことを再確認するかのようなスローテンポで、
異国での昼下がりに裸体を絡め、あり余るほどの欲情を
互いにぶつけ合う。
腰を上げ下げしたまま、勉の口を吸いながら、
母の方から望んで彼の腰部分に裸身を乗せ、
ゆったり上下左右に体を動かす。
その表情は、彼に尽くすというより、
“いつまでも我慢して私を楽しませて”
そんな感じだった。

一年後。
成田の到着ロビーに
若い夫、20歳くらい歳上の妻。
そして1歳位の女の子の
家族連れがいた。
女の子は夫が抱き抱えむずがる娘を宥めつつ
妻は
「あなた。」
夫は
「陽子」
と呼んでいる。



花母#287
トラックバック
http://macsho.14.dtiblog.com/tb.php/686-1d50ed3e
関連記事