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青森のリンゴ

息子に馬乗り

若い頃一度結婚してすぐ別れた。
子供は夫の実家で育てられたらしい。
再婚したがそれも上手くいかなくて別れた。
食べていく為と色々な職についたし、男と同棲もした。
水商売も経験したが私も歳だ。
この不景気にオバさんが働けるところと言えば、
スーパーマーケットのパートくらいだ。
今時高卒なんかこんなもんかなと思う。
街で若い子に声をかけられた。
軽くうれしくってお茶した。
また逢う約束をした。
次にデートしたとき、携帯の番号を教えあった。
その子は年増の私が気にいったようで、
四回目のデートのときホテルへいった
それでその若い子とはそれっきりになった。
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一年後。
その青年が又私の前に現れた。
初め気が付かなかったが
向こうはわざわざ私に逢いに来たと言う。
なにが目的なのかと、最初は疑った。
こんな性根の曲がった女だから、誰も相手をしてくれない。
と自分では判っている。
「逢いたかったからじゃダメなのか?」
「で、なに?」
「いや、アンタが元気してればそれでいいから。」
とあっさり彼と別れた
その二ヶ月後。
また街で彼と逢った。
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「あんた、ストーカー?」
さすがの私も目付きを鋭くして相手を睨んだ。
相手はなんか寂しそうに微笑んでるだけ。
「だからなんなのよ?」
「デートでもしたい?」
「また逢ってくれないか?」
「お土産。」
ぶっきらぼうに紙バッグを渡すと何処へ行ってしまった。
中身は大ぶりの林檎が五つ、六つ入っていた。
(リンゴか。)
それも店で売ってるものと違って、もぎたてと判る。
私の産まれは青森だから
半年後。
その彼が私の前に又現れた。
「部屋に来る?」
私のアパートに彼を誘っていた。
「いいのか?」
「どうぞ。狭いけどね。」
部屋に入ってお茶を出したあと。
おどおどしてる様子の彼に、まどろっこしくなってきて、
そろそろこっちから誘いをかけてあげようとした時。
「まだ俺のこと、分からない?」
「なにが?」
「俺、あんたの息子なんだけど。」
「え?」
その後のことはまるで記憶にない。
何時彼が帰ったのかも覚えてない。
携帯が何度か鳴っていたことだけは妙に
頭に残っている。
間違いなくここへ来た証拠に紙袋に入ったリンゴが
置いてある。
それから五年の月日が経つ。
私は彼に連れられて青森へ戻った。
大きな屋敷に彼は一人で暮らしていた。
私たち母と子は誰はばかることなく、
夫婦として愛し合っている。
最初の夫もその祖父母も亡くなっていた。
彼が私を初めて訪ねて来てからのことは
何時か手記にするからね。
そう言い、彼にとっては波乱万丈の数年間だったらしい。
いや、そうだと思う。
産みの母を探し出し相姦して夫婦になってしまうのだ。
あの頃の私は、身も心も荒み疲れ切っていた。
実の息子の胸に飛び込んで、
「もうあんな淋しい暮らしは厭だ」
と思った。
彼は母としてでなく、私を妻として可愛がってくれる。
私にとっては、まるで夢のような暮らしをしている。
役場の手続きは問題ないから、二人で子供を創ろう。
と言ってくれる。
私が産みの母親として戸籍には記載されていないから
よくは解らないけれどもそれで問題はないらしい。
彼の望みは兎に角、今のままでいいので、
いつまでも若々しくいて欲しいとだけとだけ言われている。
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今では夫として意識し始めている自分がいた。
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