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相姦の殺意

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憎い義父の寝顔を見下ろしていた俺は、
だらしないその寝顔に薄いタオルをそっとかけると同時に、
両手で握り締めた包丁を、一気に左胸にうちおろした。
(手際がよすぎるか?)
義父は何の反応も示さない。
(念のため。)
と思って、差し込んだ包丁を引き抜いた。
ピクリとも動かない。
(あっけないもんだな)
と思った時。
ギクッ!となって後ろを振り向いた。
呆然とした顔付きの母が立ち尽くしている。ワナワナと
唇を震わせてるのが、夜目にもはっきりわかった。
ダダッと母が駆け寄って、俺を押し退けると、義父の体
に馬乗りになり、両手で義父の首を絞め始めた。
「よせよっ!母さん」
俺と母は手を取り合って、義父の死体の横にペタンと
座り込んでる。今頃になってお互いに腰を抜かした。
「わたしがやったのよっ!いいわね、わたしよっ!」
まるで念仏を唱えるみたいに母はその一言を、何度も
繰り返し呟いた。(はい、はい。判りました)それよりも、
母が登場したことで、物盗りの犯行に見せかけ様とした
計画が狂った。(どうしよう?)
「どっか、その辺に捨ててくるよ」
死体をビニールの布団カバーに入れて背負い、歩ける
とこまで行って、道端にでも置いとこうと思った。
暗闇の向こうに灯りが見える。公民館だ。俺は(ギョッ!)
となった。作業服を着た男性が、タバコを吸いながら、俺に
向かって、手招きしている。引き寄せられるように死体を
背負ったまま、男性に近づいた。
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やけに遠い
事故で死んだ父が、なぜここにっ?!
「バカヤロウッ!」
ゴキッ!っと一発、硬い拳で頭を叩かれた。
俺はガキみたいに泣きじゃくる。涙がボロボロ流れる。
「父さんッゴメンっ父さん母さんとのことっ」
ゴツンっ!と、もう一発、頭に拳が下りてきた。
「もう、いい、泣くな」
ごつい手で俺の頭を撫でてくれる。
俺は泣き続けた。父の横に座って、泣きじゃくった。
父の吸うタバコの煙が目に染みる。俺には判ってる。
泣き止んだら、父の姿が永遠に消えてしまう事が
「さっきあんたを見てびっくりしたわ」
「なんで?」
「まるで前のお父さんが来た見たいで」
「もうすぐ夜が明けるねこれが最後よね」
「最後かよなんで?」
「だって人を殺しちゃったのよ」
「あんなやつ天罰だろう?」
「あんた判ってるわね私一人でやったのよ」
「すぐバレるよ、母さん」
「黙ってれば、バレないわいいわね」
「俺、未成年だから少しは軽くならない?」
「ばか言ってないで」
「母さんが刑務所に入る方がヤだよ、俺」
「ほんとにごめんね、苦労ばっかりかけて」
「そんなこと言うなよ、母さんっ!」
「あんたは朝になったらちゃんと学校行ってよ」
「一人で大丈夫かよ、母さん」
「大丈夫だから心配しないで、普段どおりにして」
「母さん、俺、父さんの幽霊に遭ったよ」
「え?どこで?」
「さっき、死体を置いた空き地にいたんだ」
「俺、父さんにバカヤロウ!ッて殴られた」
「その話、ホントなら、よかったわね」
「なんかすっごくうれしかった、母さん」
「これで思い残すことはないわ、私」
「え?」
「刑務所であんたの赤ちゃん産めるかも」
「ええっ!?」
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