入谷の山狐
これも昔話。
夏梅木の集落から少し離れた所に
入谷と呼ばれる一軒の家がありました。
貧しくても仲の良い母と息子が暮らしていましたが、
ある日。
母親が病で寝込んだので、よく効く薬草を探しに
息子の久野助が山に入り、
迷ってしまったのかそのまま帰ってきません。
村人も母親も山で死んだものと諦めました。
しばらくして母のヨネが夜なべで縄綯いをしていると、
家の外の暗闇に二つの鋭い眼光が光っております。
「きっと山狐。」
「悪さはしないだろうから追い払うこともあるまい。」
と思って夜なべ仕事をつづけました。
次の夜からその狐は毎晩ヨネの家の外に通って
くるようになりました。
秋が過ぎ、村里に小雪がちらつく頃。
悪い水に当たったのかヨネが腹痛で寝込むと
枕元に誰が置いていったのか
サイコの煎じ薬が置いてありました。
それを呑むとたちまちよくなりました。
(これはきっとあの山狐が持ってきてくれたもんだ。)
と思ったヨネは、毎晩家の木の下に
一切れの油揚げを置いておくようにしました。
さて。
白隠上人が雲水のころ。
箱根越えの途中で道に迷ってると、
山間にぽつんと家のような明かりが。
「一晩厄介になろう。」
とその家に近づき、中を覗いて吃驚。
まだ幼い男の子と、奇麗な女が
素っ裸で媾わっております。
幼い子の陽根だけが異様に太く、長く
まるで馬のようで、
そんなモノに突かれた女は今にも死にそうな
態で泣き叫んでおりました。
(これは、魔物に違いない。)
そう思った上人さまがお念仏を唱えると、
吃驚した男の子
かの家から逃げ出しましたが、
その姿は狐に見えたそうです。
女はヨネという後家さんでした。
その後。
独り身なのにヨネは三人も子供を産んだそうな。
奇跡のまどろみは里山の赤い実に宿る
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